2007年5月30日

タイムリミット

「お母さん!弁当まだー?!」

「今やってるわよ・・・まだ2分あるでしょ!」

「早くしてくんねーかなァ、友達待ってんだよね」

「6時に間に合えばいいんでしょ?・・・ハイ出来たーホラとっととお行き!」

「・・・ッタク~またギリじゃん(ブツブツ)」

「やかましい! あんたには感謝っていう・・」

「ハイハイ、わかったわかった!感謝、感謝と・・・んじゃ行ってきまーす!」

日課となっている家内と息子のけたたましいやり取りで目が覚める
ぼんやり『もう少し寝れるな・・・』と寝返りを打って二度寝を決め込む
が・・・ほどなくして


「お前これ先週のお便りじゃないの、どうして今頃出してんのよー!」

「だって忘れてたんだもん・・・」

「忘れてたって・・・えっ?部費持ってくの今日まで? もういい加減にしなさい!!」

今度は何? これも恒例となった娘とのバトルに入ったようだ
「いい加減にして」ってこっちのセリフだよーほんとに・・・


現在高校に通うウチの次男と長女は、部活のため朝がやたら早いのです。
勿論二人とも弁当持ちで、さらに朝飯もガッツリしっかり食べて行くので
家内は毎朝5時前には起き出して、髪を振り乱しながら戦場へと向かいます。
しかしほとんど毎日、私が起床する(できればそうしたい)朝7時までは
早朝の築地市場のせりのようなワケの分からん活気?に満ち溢れているのです。

また、そんな一日の壮絶な闘いを終えた家内は、夜9時を回るとご推察の通り
焼酎のグラスを握り締めたまま意識を失ってしまうため、帰宅の遅い子供たちは
私の指示で伝言板に明朝家を出る時間と弁当の要否を書き込むようになりました。
今では朝起きてまず家内はその伝言板を凝視し、頃合を計って戦闘モードに突入します。


さて、仕事でも生活でも、どんな事象にも期限というものがついて回ります。
「今週中に提出して下さい」「何時までに作成して下さい」などなど・・・
我が家の喧々諤々の恒例行事も、この期限に対する考え方に原因があるようです。

皆さんは“期限(タイムリミット)”に対してどんな感覚をお持ちでしょうか。

期限を基準にして、その期限から逆算していつ着手しようかと考えますか?
期限は気にせず、認識した時点から可能であればすぐにでも着手しようと考えますか?

「間に合えばどっちでもいいでしょ」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、このどちらの感覚が日常の思考パターンになっているかで、その出来栄えは
大きく違ってくるように思えるのです。


前者の思考パターンは、まずアクシデントに対応できません。「まだ時間がある」という感覚を持ちながら予定するので、ただでさえ優先順位が後回しになり、いざやろうとして予期せね急用でも入ったりすると(仕事では実際これがよくあります)間に合わせるために無理が生じます。最悪期限に間に合わなくなることも往々にして起こります。
やっかいなことに、難しいことや面倒なことほどこの状況に陥りやすくなります。また、精神的にもどこか追い込まれた状態になり、いつも何かに追いかけられているような慌しい印象を周囲に与えます。

後者の思考パターンは、空いた時間に前倒しで事を進めていくので、期限を待たずして一通り完了している状態になります。時間的にも余裕があるため、場合によっては見直しや手直しまで行うことができます。また、あれをやらなきゃいかんという気がかりがないので精神的にもスッキリした状態で次の課題に取りかかることができます。どんなことでもサラッとこなす、仕事のできる人という印象を周囲に与えるのです。

もちろんあらゆる事象すべてにこの考え方が当てはまるとまでは言いません。
ただ、できるできないといったその人の能力や技術の違いではなく、あくまでも“タイムリミット”に対する捉え方の違いによる行動の差だと思うのです。

ビジネスの世界では特に、後者の思考パターンで行動できるようになりたいと私は思います。


ある日曜日の朝、いつもより家を出る時間が遅い息子が
相変わらずバタバタと準備に追われる家内を尻目に
穏やかな表情でソファに腰掛けTVを見ている

「おはよう! どうした?今日はえらく余裕じゃん」

「うん(小声で)出る時間10分早く書いといた・・・」

「ほう 考えたね~」

得意げにほくそ笑む息子の頭を笑いながらこずいていると

「ヨーシ出来たーッ!ピッタシ8時50分!さあとっとと行けー!」

穏やかな休日、家内の達成感あふれる気合の入った掛け声が家中に響いた

やれやれ・・・