2008年8月30日

我が家のオリンピック

「やったー! 勝ったー! ウエノー! ウエノー!・・・ウッ・・ウッ」(泣)

嗚咽と絶叫を繰り返しながら、逃げ回る息子や娘を捕まえて抱きつくカミさん

「いや~ホントよく投げたなー・・・ “ウエノー!君はスゴイぞー!”

宇津木前監督の仕事を忘れた歓喜の涙声にも拍車をかけられ
感極まった私もさすがにこの時ばかりは叫ばずにはおれなかった

「ちょっとちょっと~ 二人とも近所迷惑だし・・・」

「なんだとー やるか小僧!」

冷ややかな息子を押し倒して暫し首を絞めてはいたが
逆襲を受けたカミさんは上野投手が初めて涙を見せた感動の表彰式を待たずに
ソファーにひれ伏したまま予定通り撃沈するのだった・・・


今月13日に開幕した北京オリンピックも、私たちに数々の興奮と感動を残しつつ閉幕しました。スポーツがとにかく大好物の私ら夫婦にとっては、こんなにワクワクする嬉しい期間はありません。何しろ世界トップクラスのアスリートの真剣勝負をほとんど毎日ライブで見られるのですから・・・

とは言え、自称現役テニスプレーヤー、現在も週休3日でテニスを続けているカミさんのオリンピックへののめり込み方たるや、他人の眼にはちょっと危ない人にしか映らないでしょう。

とにかくどんな競技でも日本選手が出場する試合なら、開始の合図とともに大きな拍手をしながら「よっしゃーガンバレー!」の掛け声を発し、アニマル浜口よろしくまずは気合を入れます。
そして試合中は本人気付いてないようですが、全身を使って選手と同じ動き(任天堂Wiiを思い浮かべて下さい)をしながら歓声と溜息を交互に繰り返し、手に汗握るなんてそんな可愛いものではなく、インターバルの段階で既に汗だく、誰にアピールしているのか分かりませんが「タイム!」と言ってタオルを取り、プレーしている選手より疲労の色を濃くしながらも「よっしゃー!ここからここから・・・」と自分に気合を入れ直し、本人曰く熱中症対策の缶ビール(ホントの目的はそれ?)で水分をとってプレー再会。家族さえ近付けない空間を醸し出し、まったく甲子園で六甲おろしを熱唱する虎ファンの騒ぎどころではないのです。

冒頭のソフトボール金メダルの瞬間は勿論、北島選手が2大会連続2冠を達成したとき、谷本選手が豪快な内股一本で優勝したとき、澤選手がニュージーランド戦で同点ゴールを決めたとき、末綱・前田ペアが世界ランク1位の中国ペアを破ったとき、アンカー朝原選手が日本男子陸上界史上初のトラック競技でのメダルを奪取したゴールの瞬間、彼女は完全に選手に成りきって絶叫乱舞、ガッツポーズの嵐、隣に住む祖父が「どうしたんだー!」と心配してスッ飛んでくる始末・・・ホント笑えません

そして私はというと、何よりボールゲームが大好きなので今日は何チャンネルで何時から日本代表の試合があるかをチェックするのが朝一番の仕事になります。

おーいよいよ“星野ジャパン”も勝負の準決勝かぁ
おいおい“なでしこ”とソフトの試合重なってるじゃん
“柳本ジャパン”も“愛ちゃん”も深夜の録画かい
“サクラジャパン”は朝ばっかりだな~
えっ“オグシオ”夕方?“オグシオ”見たいなー”オグシオ”え~何で夕方?・・・
などと我がままを言いながら、それでもチームジャパンの勝負にやはり一喜一憂し、結果はともかく存分に楽しませてもらいました。

そのボールゲームに関しては、メダルにあと一歩の4位という結果が多かったからでしょうか、終わってから監督コーチの責任とか選手の精神的弱さみたいなことを揶揄する報道が毎日のように流されました。またメダリストに対しても、番組のゲストに呼んでは当り前のように次はロンドンを目指してくれますよね?と、とりあえず最後はそこに持っていけば世間が納得するだろうみたいな風潮がありました。

ここにはちょっと違和感を感じます。

今大会でもあれだけの成績を残した競泳の北島選手や柔道の谷亮子選手に、この段階でどうして次のロンドンを目指すのかなんて確認するのでしょう。レスリングの伊調姉妹が引退するのであれば「お疲れさま、ありがとう」と拍手を贈ることが応援する側の私たちにとって唯一できることではないでしょうか。

「期待」という言葉を盾に過度のプレッシャーを選手に与えながら、それで結果が伴わなければ「どうして勝てなかったの?」「この後はどうするの?」と問い詰める。

代表の選手達は別に国民のために厳しい練習に耐えて世界を目指してきたわけではないでしょう。みんな自分のためにその競技を始め、夢と目標をもってもっと上にと鍛錬してきた結果、日本代表という栄誉を勝ち取りあの場に立ったのです。それだけでも凡人の私たちには到底手の届かないことです。周囲の支えや応援があるからこそそこまで頑張れるという理屈もあるでしょうが、こちらサイドの「期待」を満足させるために、そんな一握りの素晴らしい代表選手たちを相手にして、まだまだ頑張って欲しいと言うのはあまりに身勝手だなぁと私は思います。

日本ソフトボールチームの金メダルは賞賛以外の何ものでもない最高の結果でした。私も結果はともかくと言いましたが、最初からメダルの色なんてどうでもいいとか勝っても敗けてもどっちでもいいなんて決して思っていません。やるからには勿論1等賞になることを期待して応援しています。

ただ私としては、そこに行き着くまでの上野投手の3連投であったり、いつ再発するか分からない心臓病を抱えながら常に笑顔で全力プレーする西山選手と、その爆弾を抱える我が娘をスタンドから手を合わせ、最後まで無事にプレーさせてやってくれと祈り続ける父親の姿であったり、そういった選手一人一人のドラマをこの世界の大舞台で垣間見せてもらい、その過程があるから祈るような思いで真剣に応援できるのです。

しかしまた、そんな選手達の知られざるドラマを教えてくれるのもマスコミです。
願わくば、すべての結果を受けての今後どうするなんてのはおいといて、私たちの知らない選手達のこれまでの真実をもっと報道して欲しいなと思います。


・・・北京オリンピックを通してとりとめのないことを色々語ってしまいましたが、過去に何があったからとか未来はどうするなんてことよりも、やっぱり今その瞬間、その場で全力を尽くす選手と同じ気持ちになって一心不乱に応援するカミさんの姿勢って、ひょっとしたら一番純粋で尊い姿なのかもしれないと、キーボードを叩いているうちに図らずも認めてしまいました。



帰国した星野監督への痛烈な取材をみていたカミさんがポツリ・・・

「どうして星野ジャパン勝てなかったのかね?」

「WBCのときのイチローみたいにプレーで引っ張る選手がいなかったからな・・・」

「誰かいないの? 今の日本にそういう選手」

「どうだろう・・・“鉄人”金本くらいかな」

「おおっ金本! ♪♪六甲おろーしにー颯爽っとー♪♪

・・・あんたは一生やってなさい