2009年5月30日

定額給付金

「エーッ もらっていいのー?」

息子と娘が目を輝かせて声を揃えた

「あぁ・・・これは国が国民一人一人を対象にくれたお金だから
とりあえずウチではそういうことにしとくわ」

「ヤッター! おぉ2万円ダー! アリガトウ麻生さん!」

どうも娘は総理大臣からお小遣いを貰ったとでも思ってるらしい

「おいおい これ総理大臣のお金じゃないから・・・
元は毎日一生懸命仕事してる人たちが納めた税金だからね
まぁ景気対策の一環でもあるから貯金しなくていいけど
働いている人たちに感謝して心して有効に使いなさい」

「ハ~イ・・・ あれ?兄ちゃん働いてるくせに何で2万なの~?」

2枚の1万円札を電気にかざして見ていた19歳の兄貴に妹が喰い付いた


「給付金の額は社会人か学生かじゃなくて年齢によって違うんだよ
ただ兄ちゃんは今回ほんとラッキーだったけどね・・・
18歳以下と65歳以上の人が2万円ってことになってるんだけど
この制度に限ってはその年齢を判断する日が今年の2月1日なんだよ
だから兄ちゃんは今年2月24日の誕生日で19歳になったけど
2月1日の段階ではまだ18歳だったから2万円の枠に入ったの
もし兄ちゃんがもう1ヶ月早く生まれてたら1万2千円だったってわけだ」

「そうか~ 俺ってヤッパ何か持ってるな~」

「何言ってんの お前を産んだお母さんに8千円よこしなさい・・・違うかァ!」

名残惜しそうに金を渡したカミさんが最近気に入ってるノリ突っ込みを返す

「笑えネエし・・・意味分かんネエし・・・」


「・・・どうでもいいや ヨーシ明日からマックにガストにミスドだぁ!」

「(娘よ)お前は喰うだけか・・・心してな・・・有効にな・・・」

まァ無理もないか 臨時収入ってのは大人だってテンション上がるもんね・・・



さて、皆さんはもう定額給付金の支給を受けられたでしょうか?

自治体によって給付開始時期はこの3月から5月と結構ばらつきがあったようですが、当地松本市では今年の9月16日が申込み締切日となっているようなので、皆さんも失念しないようご注意いただきたいと思います。

昨年10月30日に政府与党が決定した「生活対策」「経済対策」に基づいて、景気後退下での家計への緊急支援という大義名分で、総額2兆円を限度とする定額給付金を実施する方向で総務省中心に調整に入りました。

その2兆円の財源は国民が納めた税金です。多額の税金を使うのであれば深刻な雇用対策にと、また景気対策と言ってもほとんど貯金に回ってしまうのではないかと危惧する声も多く、当初の世論調査では確か7割以上の国民が反対していたように記憶しています。

しかし、ご承知の通り今年3月4日に法案は成立し、現在は既に給付も開始されいるので、今さら定額給付金の是非に目を向けても仕方ないということで、一人の親としての私の考えを少しご紹介したいと思います。


どんな施策を行使する場合でも、そこには原因があり、そして目的と手段があります。この定額給付金も、前述したとおり、深刻な景気後退という原因に基づく緊急生活支援を目的とした一つの手段として行使されたものです。

こんな理屈を言い出すと、時事的には自民党と民主党がやりあっている政権交代は目的ではなく手段だ、そこを見誤ってはいけないというようなそもそも論でも展開した方が何かのお役に立つのかもしれませんが、私は今回の定額給付金という施策を、子供たちにとってとてもリアリティのある社会勉強の機会と捉えていました。

ここには当然ウチの子供たちが大人になりかけている世代であること、にもかかわらず日々のニュースにも新聞にもなかなか興味を示さないというウチなりの事情も正直あります。

ただ私は以前から、例えば子どものいじめや自殺、高齢者を狙った振り込め詐欺、政治家の贈収賄事件、はたまた有名芸能人の結婚や離婚騒動などのニュースが報じられると、それを題材にして子供たちとよく話をしてきました。

自ら興味の持てない新聞やニュースをそれなりの歳になったんだから読みなさい、見なさいと親が言ったところで理解できるわけでも頭に入るわけもないので、せめて実際に起こった事象を通して、それがただ良いとか悪いということだけではなく、その原因や背景、人の気持ちなどを子どもたちに話し、そして彼ら自身の思いも聴いたりすることで、「自分には関係ない」ではなくて、たとえ僅かでも我が事として考えたり感じたりすることができればと思ってのことです。

そういった機会を多く持つことで、物事に対して偏らない考え方ができるようになったり、身の回りに起こるちょっとした出来事にも目と心を向けられるような人間になって欲しいと、親バカながら淡い期待を抱いているのであります。

今回の定額給付金は、もともと生活支援が目的ですから、当然のことながら家族それぞれに分けなければいけないものではありません。その家庭の事情に即して運用すればいいわけです。

勿論ウチも経済的に余裕があるわけでも何でもないのですが、実際にお金が支給されるなんて現実的なシチュエーションは滅多にないので、ここはひとまずそれぞれに支給された給付金をそれぞれが受け取って、子どもたちもこの施策が行われた原因や目的を生の感覚で知り、今の日本がどんな状況なのかということに多少でも興味を持ってくれればと考えています。あくまで自論ですが、これが今回定額給付金を子どもたちに分け与えた私の思いなのです。



「そういえば お前定額給付金のことベラベラ喋んなよ」

翌日ちょっと気になって帰宅した娘にそれとなく釘を刺した

「エッ?・・・もう部活のときみんなに話しちゃったけど・・・」

「な、何て?」

「定額給付金もう貰った?って」

「カーッやっぱり~・・・昨日言っときゃよかったけど
それぞれの家庭で事情が違うし、貰って当り前じゃないから
もう大騒ぎしないように!」

「そうか・・・分かった」


親として何ともフォローが不十分ですが、真意をご理解頂ければ幸いです。