2010年6月29日

四年に一度

キター!! ヨッシャー!! ホンダ!ホンダ!ホンダ!」

決勝トーナメント進出をかけた運命のデンマーク戦

前半17分、本田の無回転フリーキックが鮮やかに敵のサイドネットを揺らす

一瞬遅れて響いたカミさんの雄叫びもまた 真夜中の静寂な住宅街を揺らす


「キター!! ヨッシャー!! エンドゥ!エンドゥ!エンドゥ!」

先制点の興奮冷めやらぬ前半30分

今度は職人遠藤の狙い済ましたフリーキックが
芸術的な弧を描きながら相手ゴール右隅に突き刺さる

雄叫びと同時に鋭く突き出したカミさんの左手グーのガッツポーズも
五十路女とは思えない強い衝撃で私の右手上腕二頭筋に突き刺さる

我を忘れ完全に日本代表の一員と化したカミさんは
チームメイトに手荒い祝福を受ける遠藤の画にやおら駆け寄り
アクオス37型亀山モデルの薄型液晶画面に抱きついて祝福の接吻

四年に一度の世界の祭典を前にすると 相変わらず滅法危険な人種に豹変する…
(2008年8月「我が家のオリンピック」参照)


さてさて今回のワールドカップでの日本代表の予想外の躍進は、大会前の盛り上がりに欠ける沈滞ムードをブッ飛ばし、日本中がまったく予期せぬプレゼントを貰ったようなサプライズに包まれ、大きな感動と興奮の中、久しぶりに胸躍る熱き夏の夜の夢へと昇華した。


そのワールドカップと言えば、4年前のドイツ大会のときもこのコラムで少し触れた記憶があったので、何を書いたのかと当時の投稿(2006年7月「改革と改善Vol.1」)を斜め読みしていると、このコーナー自体がその2006年の3月からスタートしたことにハタと気がついてしまった。

もう4年も経ったのかぁ…と、暫し自己満足な感慨に浸っていたのだが、不思議なもので結構長く続けてきたなという思いと、振り返ってみれば4年なんてアッという間だなという思いが交錯する。


果たして真のアスリート達にとって、この4年という歳月は長いのか短いのか…

前回ワールドカップドイツ大会日本代表メンバーの主力は、あの中田英寿を中心に、小野、中村、高原、稲本らの黄金世代と呼ばれた選手達。
彼らは当時、年齢、経験ともに最高に油の乗った時期、おまけにその日本代表を率いる監督はブラジルの英雄ジーコ。
当然今回とは真逆なほど前評判が高く、誰もが史上最強のチームにそれこそ初のベスト8進出も夢ではないという期待を膨らませていた。

ところが予選リーグ初戦、オーストラリアに2対0からまさかの逆転負けを喫すると、その後も期待された実力を発揮することなく、1分2敗という戦績で悔しい予選リーグ敗退に終わってしまう。大会後、引退する者、海外に活躍の場を求める者、それぞれの道に歩を進めながら、また4年という歳月が流れる。

そして今大会、ベテランの域に差し掛かった黄金世代で代表メンバーに選出されたのは中村と稲本の二人だけ。しかも試合のほとんどを、二人はベンチから見守ることとなった。


スポーツ競技の世界では、年齢的なピークという避けられない壁があり、四年に一度の一発勝負に懸けるコンディションやモチベーションの維持調整が必須条件となる。
彼らにとって4年という歳月は、微妙且つ厳しい現実であることに間違いなさそうだ。


それにしても世界スポーツの祭典は何故四年に一度なのだろう?

オリンピックについては諸説あるようだが、紀元前古代オリンピックが開催されたギリシャで、当時使用されていた太陽暦の周期が8年だったことに由来しているという説が最も有力らしい。
当初8年周期で開催という意見もあったが、それではあまりに期間が空き過ぎるので2期に区切って4年周期で開催することに決定し、19世紀後半近代オリンピックの時代になってからも、これを踏襲して四年に一度の開催が定着したと伝えられている。


ワールドカップの四年に一度にはいささか曰くがあるようだ。

きっかけは、オリンピックのサッカー競技で「プロ選手の参加を認めて本当の世界一を決めよう」と訴えていた国際サッカー連盟(FIFA)の主張を、長くアマチュア主義を貫いてきた国際オリンピック委員会(IOC)が一向に受け入れなかったため、業を煮やしたFIFAが本物のサッカー世界一決定戦と位置付け、1930年南米ウルグアイで参加13ヶ国の世界大会をワールドカップと冠して独自に開催。
その後大会の威厳を保持するために、敢えてオリンピックと同じ四年に一度の開催に決定した。言ってみればオリンピックに対抗して誕生した大会なのである。


新しいところではワールドベースボールクラシック(WBC)がある。

忘れもしない昨年3月日本中が熱狂した第2回WBC日本VS韓国の決勝。
3対3の延長10回表、2アウトランナー2・3塁、バッターは我らが世界のイチロー。
カウント2-2から韓国の守護神イム・チャンヨンが投じた渾身のストレート。次の瞬間イチローのバットから放たれた糸を引くような打球はセンター前決勝2点タイムリー! 
おお~ 今思い出しても絶叫、鳥肌、さぶいぼのオンパレード。

このイチローの一振りで原ジャパンが見事大会2連覇を成し遂げたWBCも、次の2013年第3回大会からは四年に一度開催されるという。昨年の第2回大会は3年目に開催されたのだが、4年目にすると今年のワールドカップと重なってしまうという理由から1年前倒しで開催したと報道されている。
ただ、このWBCだけは、参加国が少ないこと、各国シーズンの日程調整等の関係で、いずれ消滅するのではないかという噂も囁かれているのが気にかかる…


とりあえず今のところはオリンピック・野球・サッカーと、それぞれ四年に一度順番に開催されるのだから、もう一つ、例えば賞金10億円を懸けたプロゴルフ国別対抗団体戦なんて世界大会が立ち上がれば、個人的には毎年楽しめるんだけどな~

寝ボケ眼をこすりながら、そんなつまらないことを結構本気で考えているここ最近の私なのです…。



ギャー!! ウソー!! コマノ~ォ~ ナンデ~」

決勝トーナメント1回戦 
日本代表はパラグアイとドロー
PK戦で1点足りず ベスト16で敗退

「PKなんてときの運 ジャンケンと同じだ いちいち騒ぐな!」

悔しさのあまり つい語気を荒げてしまった

「…ウッ…ウッ…」

日本代表の一員と化したカミさんは精も根も尽き果て
アクオス37型亀山モデルの薄型液晶画面を前にして
チームメイトを労いながら嗚咽を漏らして泣いている

「でも いい夢見させてもらったよな…」


喜びも悔しさも この底抜けの感動が四年に一度の醍醐味

サッカー日本代表のみなさん 本当にお疲れさま!!