2014年6月1日

夫婦の秘訣

「今年でもう30年になるの?」

「…なるの?じゃなくて なぜ自分で数えようとしない?」

「だって途中で昭和から平成に変わったから分かりにくいじゃん」

「昭和で言ったら今年は89年 ウチらが結婚したのが60年」

「あら それじゃ29年か~ 25歳で結婚したから
 親より長く一緒に生活してるんだ~ で 何くれるの?」 

「なんだそれ お互い様の記念日なのに
 なんでお前が貰う人でオレがあげる人なんだよ」

「え~ だって普通亭主が『こんな男によく付いてきてくれた』
 とか言って指輪かなんか用意するってもんじゃないの~?」

「お前ねぇ『こんな女によく飽きもせず一緒にいてくれてありがとう』
 くらい言ってもらいたいもんだがな…」

「バカなこと言わないでよ こんな好い女に飽きるわけないでしょ!」

「な… そうきたか… 分かった分かった(耐)
 じゃ息子たち誘って旨いものでも食いに行こう」

「よーし! やりぃ~」


 よく続いてきたもんだ・・・(笑)




6月1日は私ら夫婦の29回目の結婚記念日でした。

私たちは、1985年5月18日に新婚旅行を兼ねたハワイの教会で二人だけの結婚式を挙げ、その教会から結婚証明書を頂きました。

そして翌6月1日に、以前私が勤めていた駅前のホテルで、親しい友人や社会に出てからお世話になった先輩方、そして現在の職場の仲間などをお招きして、80名ほどのこじんまりとした会費制の立食パーティを開き、仲間内だけの結婚報告をさせていただきました。

私に男としての甲斐性がなかったために、俗に言う普通の披露宴は挙げられず、カミさんには白無垢も着せてあげられませんでしたが、それが当時の私にできる精一杯のセレモニーだったのです。

お互いの親兄弟や親戚にはずいぶん不義理もしてしまいましたが、当時の私の家庭環境や状況を理解し、そんな形の結婚報告を認めてくれ、後押ししてくれたカミさんのご両親には心から感謝しています。


ただ、その披露パーティは、懇意にしている仲間を私ら夫婦がお招きするというコンセプトだったので、昔のバンド仲間のライブ演奏に乗せたウェルカムドリンクに始まり、新郎の私自らが司会を担当するなど、当時の常識では考えられない演出を、形式的な披露宴ではないという立場を逆手にとって、私たちがすべてプランニングさせてもらいました。

そして、そんな掟破りの要望をホテルの旧知のスタッフが快く受け入れてくれて、それどころか私が在職中にとてもお世話になった料飲支配人からシャンパンとワインの飲み放題が、総料理長からはローストビーフのワゴンサービスがサプライズプレゼントされるなど、想定外の盛り上がりの中で心に残るパーティを開かせていただきました。

さらに素晴らしい仲間の心温まる祝福や心強いエールをいただき、そのパーティは私たち二人にとって生涯忘れることのできない至福のひとときとなったので、どちらから言うこともなく、私ら夫婦の結婚記念日は、式を挙げた5月18日ではなく6月1日になっていたのです。(2010年9月『アニバーサリー』)


私たちは高校の同級生で同じ硬式テニス部で、一年生の頃から割とオープンに付き合っていたので、その時代から結婚するまでの10年間を含めると、かれこれ40年近く、これまでの人生の3分の2以上の時間を一緒に過ごしてきたことになります。

今回、ある方から夫婦が長続きする秘訣は何ですかと尋ねられました。

私は悩むことなく、自分のことを二番目にすることだとお答えしました。

あくまで夫婦間のコミュニケーションにおいてはという意味で二番目と言ったのですが、とりあえず自分の欲望や主張は後回しにして、相手の欲望や主張を先に聴くということです。

但し、先に聴くからといって相手の言うことを鵜呑みにして、何でも自由にさせてあげるということではありません。重要なのは先ず相手の話を聴いて尊重する意識を持つということです。

言うまでもなく、欲望とは自己が欲するもので、食欲、物欲、色欲、金銭欲、独占欲など、モノの本では七つの欲があると言われています。

欲を持つことそれ自体は何ら悪しきことではないと思いますが、その欲望に執着し、これを獲得せんがために周囲が見えなくなってしまうと、それは単なる自分勝手な我儘でしかありません。

また、主張とは自分の意見や考えを相手に認めさせようとする行為です。自分の明確な意見を持つことそれ自体はとても大切なことだと思います。

しかし、その意見というものが、ある事象に対する事実を正確に把握した上で、自身が客観的な立場に立って評価判断して導き出された見解であれば、それを主張しても意見が対立することはほとんどないはずですが、人は導き出す意見の評価判断の基準が、自分の好き嫌いに基づいてしまっている場合が非常に多く、その好き嫌いから導かれた意見の主張はこれまた単なる独善的な我儘に他なりません。

現在2~3分に一組が離婚するといわれている夫婦間に生じる亀裂のきっかけは、そのほとんどがこの欲望や主張を我先にと押し通そうとする行為にあるのではないかと私は思っています。

今さらですが、生まれも育ちもまったく違う他人同士の男女が一つ屋根の下で寝食を共にするのが結婚です。惚れたの腫れたのそれだけで、長い年月を順風満帆に過ごして行けるほど簡単なことではありません。

だからこそ相手の気持ちや意見をお互いが優先する意識を持って接することができれば、無用なトラブルが生じる可能性は低くなり、そこに相手を思いやる心も自然に育まれるのではないかと思います。


私らの三人の子どものうち、長男と次男はすでに結婚しています。

一家の大黒柱となるべき彼らには「自分のことなんかどうでもいいから常に家族のことを最優先に考えて行動しなさい」と教えてきたつもりです。

今はどちらも半人前の夫婦ですが、実生活の中で色んな経験をしながらお互いを高め合ってくれていると信じてます。

そんな彼らが私らの背中を見ながら良い夫婦になろうと頑張っている以上、私らも彼らの目標となる夫婦でいられるよう、今以上に明るく健康に過ごして行かなければと決意を新たにした結婚記念日となりました。




「え~結婚記念日なんだ おめでとう!」

 近くに住む次男夫婦と孫娘を連れてなじみの寿司屋でお祝い

「ちょっとやだ 結婚記念日知らないの!?」 

 嫁が驚いて息子に噛みつく

「だって今までお祝いなんてしたことなかったよね」

 確かに結婚記念日なんて何もしなかったから
 子どもたちが知らないのも無理はない

「信じられない 大事な日なのに…
 大丈夫です! もう私が覚えました 
 来年からは任せて下さい!」

 何とも可愛い嫁である・・・が

 寿司でもご馳走してくれるのはいつになることやら(笑)